軍裏＠ふたば保管庫 [戻る]

>思えば日本人(日系人)は親の祖国よりも自分が生まれた国への帰属意識が高いよね。 戦前メリケンのカルフォルニア州で日系移民への排斥機運が高まってた明治末期〜大正の頃に、日本外務省が日系移民の方々に通達した「加州在留民に対する注意事項要領」なるものがありましてその内容ってのが・日本語だけを話さずに英語を用い、米国人との「意思疎通」を図るべきである・努めて在留地の米国人と往来し、「隣保の和親」に努力せねばならない・自分の本業にはげむだけでなく、地方の開発と発展にも貢献すべきである

・子弟の教育は、できるだけ在留地である米国のものに適合させよ ・収入は必ずしも「悉く本邦に送ら」ないで、「在留地の事業」に対する投資、あるいは「地方米国銀行に預け入れ」すべきである・「眼前賃金の増進」だけを考えず、雇い主の利益も配慮せよ…というものなんだそうで、裏を返せば当時メリケンと日系移民との間でどういう事が問題になってたのか、って事を示してるんですな何というかまあ、現地に溶け込まない移民内閉鎖コミュ形成への反発ですとか、成功者と言うか「稼いでいる」ものへの妬み嫉みですとか、他国からの「出稼ぎ」に現地経済が収奪されてる！論ですとか今も世界のどこかで悶着の種になってるような事ばかりなんですが言い換えればその後の日系移民の方々の歴史ってのは、そういう負のイメージを払拭して何とかアメリカに溶け込もう、っていう涙ぐましい努力の過程でもあるそうなんですな

因みにクロキさんの場合、1942年に最初に配属されたのがエゲレス駐留の第93 爆撃機グループで、当初は戦闘員ではなくタイピストとしての配属だったんですが射手の養成コースに潜り込むと欠員の出たB-24に銃手として乗り込みその初陣でドイツ機2機の撃墜を記録するなど中々冴えた腕前の持ち主だったみたいなんですがその後も幾多の戦闘を潜り抜け、その回数が23回に達した頃、ある作戦前に上官から（本国帰還規定の）25回も間近いことだし、今度の出撃は見送ったらどうだ？と打診されたんだとか

これにクロキさん答えて曰く 「最近の新聞で知ったのですが、カルフォルニアの日系人は全員収容所に入れられたそうです。この際、日系でも、米国市民としての義務を尽くす点では誰にも負けないことを広く知って貰いたいのです」この熱意が通って、クロキさんは24回目の任務に出撃するんですが実はこれが米爆撃隊にとって有数の激戦の一つになるルーマニアのプロエスティ油田への爆撃作戦だったりするんですな100機以上のドイツ・ルーマニア軍戦闘機と、237門の対空火器に厳重に防護された油田上空に侵入した米爆撃機165機の内、実に66機が撃墜されるか不時着し未帰還になったこの戦闘から、穴だらけの乗機に乗って生還したクロキさんには作戦後同僚13名と共にシルバースター勲章が授与されたそうで

その後クロキさんは更に規定の25回を超えても出撃を重ねるも 30回目の出撃で負傷し、本国に送還され「米爆撃機隊のヒーロー」としてラジオ出演したりするんですがそんなある日に、クロキさんがタクシーに相乗りしようとしたところ白人の同乗者は制服姿のクロキさんの胸にズラリと並ぶシルバースター以下の戦功章のリボンには一片の経緯も払わず「不潔なジャップとはお断りだ」…と断ってきたんだとか程なくクロキさんは陸軍航空隊に太平洋戦線従軍を志願、粘り強い運動の末再びB−29の射手として前線に出るんですな

テニアン島基地から神戸、横浜、東京…と28回の任務をこなして生き残った クロキさんは戦後、カルフォルニア州で行われた戦勝祝賀会で陸軍参謀総長マーシャル元帥と並んで戦勝祝賀演説を求められるんですがその中で「自由の国アメリカに今も根強く残る人種偏見を無くすため、これからも戦い続けるだろう」…と述べてるんだとか戦後クロキさんは故郷ネブラスカ州の大学でジャーナリズム論で学位を取得、地方新聞を創立しジャーナリストとして活動するんですが、これも本人が「わたしの59回目の出撃」と呼んだ人種偏見への戦いの一環だったのかもですのう