A「民族とか国籍を - ニュース表@ふたば保管庫

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「大阪市長vs在特会会長」面談の無責任報道…ご都合主義のエンタメ志向

 A「民族とか国籍をひとくくりにしてな、評価をするようなそういう発言をやめろと言ってんだ!」
 B「朝鮮人を批判するってことがいけないと、あなた言ってるわけ?」
 A「お前なぁ」
 B「『お前』って言うなよ」 
 A「うるせぇお前、お前が…」

 これだけを読むと、居酒屋で酔っ払いが言い合いをしている場面を想像するが、20日に大阪市役所でマスコミ公開のもと行われた橋下徹大阪市長(A)と「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の桜井誠会長との面談の一部である。

 20日夕のテレビニュースや、翌21日の各紙朝刊はそれを「怒号飛び交い10分足らずで終了」「一触即発の雰囲気」などと報じた。動画配信サイトで確認できるが、両者の面談の前には桜井氏が取材に押し寄せたマスコミ各社を前におよそ5分間、「君たちは記者としてきているのだから、撮影場所の約束ぐらい守れ!だからゴロツキメディアなんだ、それ以外の所で私を撮るな!」などと面罵する場面もあった。

 また、在特会の関係者がこの面談の数日後、別の場所での反対者への暴力行為で逮捕された。在特会は東京の新大久保や大阪の鶴橋などのコリアンタウンにおける数百人規模のデモを主導。

 京都では、京都朝鮮第一初級学校(京都朝鮮学園運営)近くで、在特会のメンバーらが生徒たちを北朝鮮のスパイ呼ばわりするなどの街宣活動を連続して行ったため、学園側は2009年12月に京都地方裁判所に提訴。1審判決は、日本も加盟する人種差別撤廃条約を根拠に「表現の自由を超えたもので、差別に当たる」「平穏な授業を困難にし、学校の名誉を損なった」とし、在特会に対し、約1220万円の損害賠償と学園周辺での街宣活動禁止を命じ、今年7月の2審の大阪高裁でも、その判決が追認された。

 今回の面談をめぐる報道では、メディア的に問題も残る。ユネスコ(国連教育科学文化機関)が1978年に採択したメディアの社会的役割についての宣言の正式名称は「平和と国際理解の強化、人権の拡大、人種差別・アパルトヘイト・戦争扇動への反対のためのマスメディアの貢献に関する基本諸原則」である。

 ヘイトスピーチ(憎悪表現)が、社会的コミュニケーションの倫理違反であり、「言論・表現の自由」には当たらないことは国際的合意であり、報道の基本なのだ。

 その類似規定は日本新聞協会やその加盟各社の倫理規定にもある。にもかかわらず、メディアは、両者の面談を「プロレス観戦」のように「客観・事実」報道するだけで、「政治に興味はない、政治家はもっともげす、言論の自由を認めよ」という桜井氏の矛盾を批判せず、その責任放棄をしている。加えて、面談前の桜井氏によるメディア批判の場面には、テレビも新聞もどこもふれていない。しかし、ネットではオープンだから、マスコミから離れる人たちが出てくる懸念もある。

 また、橋下市長が在特会と正面から向き合おうとしたことは評価できるし、その主張の大枠は首肯できる。だが、在特会と同じレベルで議論を行ったことは、市長職をおとしめることになる。

 なぜそうなってしまったかといえば、橋下氏も桜井氏も数多くある政治的課題、日本社会の問題について、社会的に妥当な優先順位をつけず、自分の都合で一点突破主義を採用。メディア側もそうした活動のほうが記事や映像にしやすく、オーディエンス(読者・視聴者)にもエンタメとして好まれる部分があるからだろう。

 そのやり方は、小泉純一郎氏が首相時代にやった郵政民営化を問うだけの総選挙に有権者も乗っかった騒ぎとも共通している。

http://www.sankeibiz.jp/express/news/141029/exc1410291025002-n1.htm